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幸い、母はキチンと色々と残してくれていた。
住む場所だって、母の実家に住んでいた訳だから、大丈夫だ。
高校だって奨学生で入っているし、バイトだってしている。
私はまだ、恵まれている。
大丈夫。生きていける!うん。
『ウチューせんぱーい!』
「なんだいなんだい、そんな急いで」
後輩が私を見るなり駆け寄ってきた。人によって様々だが、『うちゅう先輩』や『ひろたかくん』や『ひろちゃん』など、いろんな呼ばれ方をしている。でも、大抵『うちゅう』かな。
『聞いてくださいよ!すっごい大・大・大!ビッグニュースです!』
「ビッグも大も同じだよ(笑)」
若干アホで可愛い後輩だ。
『すんごいんですってば! 文化祭にあの、あの!【レイ】が来るんですって!』
「あ、本当にすごい。
【レイ】って、あの…アイドルのでしょ?」
『です! 正体不明!本名不明!年齢不明! 素晴らしく美しい上に歌も上手くて色気がハンパない、あの!』
「はははー、興奮しすぎ(笑)」
『鼻血出ちゃう!先輩ももっと興奮しましょーよ!
あんなに日本人ばなれした美しい顔の男性なんて、見たこと無いじゃないですか!』
後輩が興奮するのも仕方ない。
真っ白な肌に、金色だったり赤色だったりする眼。
高い身長とバランスのとれた身体。
歌だけではなく俳優としても活躍する【レイ】は、さまざまな憶測が飛び交うアイドルだ。
実はどこかの王族?
実は日本人じゃない。
本当は黒目黒髪か?
など。しかしどれも真偽はわからない。
不思議なアイドルだった。
「しかしなんでウチの学校に?」
『テレビの企画らしいですよー』
今頃生徒会はてんやわんやだろうなー。
宇宙は暢気に友人たちを思った。
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