第零章

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監禁生活丁度一年目にあたる六歳の誕生日、トレインはグレイの居室に呼ばれた。 そこにはグレイの他にダイト、ミラ、ティアと家族が皆揃っていた。その他にもう一人、フードを深くかぶっていて顔は窺えないが同い年位の子供がいた。 久しぶりに兄に会えたとあってティアは嬉しそうに笑みを浮かべていた。それとは正反対にミラの表情は沈んでいる。 「さて、賢いお前のことだ。ここに呼ばれた理由は察しがついているだろう?」 グレイが口火を切る。 「僕はもう不要ということですね」 「その通りだ。替わりが見つかったのでな」 グレイはフードをかぶった子供に目を向ける。それを受け、子供はフードを脱いだ。 そこには黒髪の、だがそれ以外は見分けがつかないほどトレインと酷似した少年がいた。 「今日からこの子がトレインになる。貴様のような無能に用はない」 「えっ…?」 その言葉を聞いて初めてティアが疑問の声をあげる。 「どういう意味ですか、お父様?」 「言葉通りの意味だよティア。今日から彼が兄になるんだ」 そう言ってグレイは少年の髪に手を触れる。すると少年の髪色がトレインと同じ紅色に染まった。 「本日からよろしくお願いします。父上、母上、お祖父様、ティア」 今この瞬間からトレインになった少年は丁寧に頭を下げた。
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