第零章

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* * * * * * * * * * * * * * * 五年後ーーー兄妹は健やかに育っていた。特に兄であるトレインーーー父親譲りの紅髪紅眼、人目を惹かずにはいられない整った顔立ちの少年ーーーは身体能力、知力において抜きん出た才能を持っていた。妹であるティアーーー同じく紅髪紅眼、人目を惹く可愛らしい顔付きの少女ーーーは兄には一歩劣るものの、それでも同年代の子供からは抜きん出ていた。そんな二人を見て鼻高々なのが父であるグレイ、そして祖父であるダイトである。兄妹の成長を満足そうに見ている。母であるミラは兄妹の才能とは関係なく、単純に日々育っていくのを温かく見守っている。 今日は兄妹の五歳の誕生日。そして魔力測定日である。 ガリア王國では、魔法を教えるのは五歳になってからと法律で定められている。それより早く魔法を使うことは成長に悪影響を及ぼすことが分かっているからである。 当主であるグレイは、今日という日を待ち望んでいた。二人とも天才と言っていい才能の持ち主だ。順調に育てば王國でも有数の魔法使いになるだろう。 兄妹の未来を想像しながら二人が来るのを測定室で待つ。測定室と言ってもたいして広くもない部屋に水晶玉が置いてあるだけである。部屋には父であるダイト、妻であるミラの姿もあった。 程なくして二人がやって来た。 「失礼します。お待たせしました、父上」 「待っていたよ、二人とも。それでは早速始めようか」 緊張している二人に水晶玉を示す。 「これは魔水晶と言ってね。魔力の属性を調べる物だ。見ててごらん」 そう言ってグレイは魔水晶に魔力を流し込んだ。
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