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身体に纏った雷で人体の電気信号を加速させ、高速での行動が可能となったムアルが、右の剣で斬り掛かり、本気のライガードナイトが左手の爪で素早くそれをいなす。
ライガードナイトが右手の爪を突き出し、ムアルが左手の剣の側面で防ぐ。
そんな行為がコンマ数秒レベルで繰り返される。
本人達にとってはこれ以上ないほどに長い、しかし実際には十秒程度の時間の果て。
勝ったのは、月の王子だった。
叩き付けるように振られた蒼剣の先が、白虎騎士の脇腹を斬り付け、刀身を深い紫に濡らしている。
腹を押さえながら、騎士はさがる。
怪物じみた風貌から整った顔立ちの青年へと姿を変えた──といっても、こちらが本来の姿なのだが──騎士の口から出たのは、しかしながら痛みからくる悲鳴でも、怒りからくる雄叫びでもなく、どこか愉しげな笑い声であった。
二人以外の気配のないさびれた商店街には、テレビで大好きな芸人のネタを見た子供のような純粋な笑いがよく響く。
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