婆娑羅編

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片倉小十郎<甘> [眠れない] 障子の向こうの気配に、俺は目を覚ました。 気配の正体はわかっている。ここ最近、同じ奴ばかりが来るからだ。 障子を開けると、案の定ソイツがいた。 ソイツは寝間着の上に着た羽織りを握り締め、弱々しい声で呟いた。 『眠れない……』 だけど本当は、迷惑をかけたくない。 声の中に含まれた優しい葛藤に、俺は笑ってソイツの頭を撫でた。 腕を掴み部屋に引き入れ、共に布団に潜って腕枕してやると、ソイツはすぐに安らかな寝息をたてた。 俺はソイツを優しく抱き締め、目を閉じた。 今は俺の腕の中で、ぐっすり眠れ。 そのうち……俺が眠れなくしちまうだろうからな。
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