婆娑羅編

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真田幸村<ほのぼの> [お休みの言葉] 鍛錬を終えると、月はもう高い場所まで昇っていた。 慌てて湯浴みをし部屋に戻ると、あの方はもう寝ていらした。 今日もまた「お休み」も言えずに、あの方を先に寝かせてしまった……。 自己嫌悪に拳を握り締めると、ふと机の上の文に気付いた。 もしかしたら、俺への罵倒が書かれているのかもしれない。 そう思うと読むのが怖かったが、それは当然の報いと思い、文を手に取り目を通し……驚愕した。 そこに書かれていたのは、遅くまで鍛錬に励む俺への激励と……俺の身を案じているということだった。 更に最後には「お休み」という言葉が……。 俺の心配までして下さるとは、なんとお優しい方だろうか……。 俺は文を丁寧に畳み引き出しにしまうと、あの方の側に寄った。 布団から出ている手をそっと握り締め、心に誓う。 明日は必ず「お休み」と言います。と……。
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