婆娑羅編

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風魔小太郎(現代)<ほのぼの> [眠れない夜の話] ホラー映画を見たその日の夜。君に呼ばれて部屋に向かう。 「怖くて眠れない」と不安げに言う君の手を、僕はやや強く握った。 出せない声の代わりに、君の恐怖が少しでも薄れるように、僕は優しく微笑んだ。 安心して。君が眠りにつくまで、僕がずっと手を握っていてあげるから。 伝わったのか、君はホッとしたようにふわりと笑み、そのままスッと眠ってしまった。 最後に、ポツリと呟きを残して。 『手を……離さないで』 大丈夫だよ。君が起きるまで、君が起きても、ずっとずっと握っていてあげるから。 だから今は、安心して眠っていて。 僕は君の頭を撫でながら、君の寝顔を見て願った。 どうか君に良い夢を。 そして明日も、僕に君の笑顔を見せて。 君の頬に優しく口付けて、僕は君の隣りで目を閉じた。
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