婆娑羅編

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前田慶次<切甘> [恋はいいもの] いつの間に寝ちまってたのか、目を覚ますと辺りは真っ暗だった。 机に俯せてた俺は目を擦りつつ身体を起こすと、背後に気配を感じた。 振り向くと、そこには羽織りを持ったあの子がいた。 どうやら眠った俺にかけてやるつもりだったらしい。 礼を言うと、あの子は困ったような笑顔で言う。 「風邪をひかれては困るから」って。 それだけで、俺の心は温かくなった。 こんな感情、ねねが死んでからは……初めてだった。 俺は再び礼を言うと、あの子の腕を掴んで引き寄せ、唇を合わせた。 あぁ……やっぱ恋ってのはいいもんだな。
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