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忙しい日々がまた続きそれでも幾らか慣れ始めた頃、私は夜遅くまで事務所でデスクワークをしていた。
彼らのスケジュール調整も終わり、喉の渇きを感じて自販機に向かったら…同じ廊下で少し足元のふらつく馨に会った。
「こんな時間にどうしたの?」
「やっぱりまだ事務所にいたんだ…」
馨は虚ろに酔った目で私を見た。
「ちょうど今終わったとこだけど…」
「なら良かった…」
そう言って彼は少しずつ私に近付いた。
「私に何か用だったの?」
少したじろぎ問いかけると
「誘いに来た…」
と呟いた。
「誘いに?」
「この前の話…抱かせろってやつ…」
「あぁ…」
(あの時の…)
「今夜辺り…一杯飲みながらどうかと思ってね…」
また更ににじりより、私の顔を覗くように屈んだ。
「本気にしてたんだ…」
「冗談だったのか?」
「当たり前でしょ?」
「…オレはそう取ってない…」
馨の目が座りまたジリジリと私ににじりよる。
彼の身体からふわりとムスクの香りとアルコールの匂いがした。
あまりの距離の近さに私は後退りをし、気付けば背後の行き場をなくしていた。
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