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会長宅から帰った夜の日から樹と滉の仲は複雑に微妙で一定の距離が保たれた。
どちらかといえば樹の方から滉を避けるような行動をする傾向にあった。
『この先…ないわ…』
あの日の樹の言葉が滉にはショックで近付くことを躊躇してしまう。
近付けば近付くほどあの日のセリフをまた聞かされそうで怖かったのだ。
そんな風な距離が続いたある日、朝早く事務所でデスクワークをしていた樹の社内電話が鳴った。
「はい…藤島です」
『おはよう…私だが…』
電話の主は篤史だった。
「あ…おはようございます…」
『今からこっちに来てくれないか?』
「えっ…あ、はい」
『待ってる』
端的に切れた電話。
(何の話だろう…もしかして…この前のこと?)
何か言われるのだろうか…。
不審にも姉の部屋に居た私を…。
そう思ったが呼び出されたことに胸が躍る。
私はすぐに仕事を止め社長室に向かった。
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