抱擁

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「今回サクヤの方からAKSに曲を提供したいと言って来てな…。 とてもいい話だと思って私がOKを出した。 どうだろう藤島君、受けてみないか?」 入室したサクヤさんが私の隣に座った途端、篤史さんが本題をすぐ切り出した。 「え…あぁ、サクヤさんの曲ならとてもいいお話だと思います」 「へぇ~♪君、オレの曲聴いたことあるんだ?」 “本当?”と言いたげに頬を緩め私を見つめてきた。 「えぇ…前にTV局の撮影やラジオで」 「そっ♪」 サクヤは嬉しそうににっこり笑う。 「藤島君もOKだと言うならすぐにでも取り掛かってもらおう。サクヤ…いいか?」 私とサクヤさんの顔を交互に見やり篤史さんが結論を急ぐ。 「OKですよ♪甘~いラブソングなんかどうかな?君はどう思う?」 私の反応を楽しむように唇の端を少し上げ微笑み見てくる。 私はそんな彼を見ないように顔を逸らした。 「では、これから二人で打ち合わせを始めてくれ…。 早急に済ませて申し訳ないが私はもう出なくてはいけないから」 “用件はそれだけだ”と言わんばかりに篤史さんがソファーから腰を上げる。 何かしら先日のことを問われるかも…と思っていた私は、少し肩を落とした。 責める言葉でもいい、二人しかわからない話を出来るだけでも嬉しかったのに…。 篤史さんはやっぱり何も言ってくれなかった。 それほど私に興味がないのだと思い知らされる。 私の表情は途端に陰を射した。 .
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