抱擁

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楽屋に入って行く二人を追い一歩踏み出した時。 「アンタ…あからさまにホッとし過ぎ…」 背後に馨が居た。 冷たい指摘が私の背中を刺す 「そんなつもりじゃ…」 言い切れない自信の無さが声を小さくした。 「みえみえなんだよ…」 「…」 「自分では顔に出てないつもりかもしれないが…全然出来てない…」 「大きなお世話…」 そう言い返すのが精一杯だった。 馨を置き先に歩みを進めると、彼も私に付いて来た。 楽屋のドアを開けようとした時…馨は私にだけ聞こえる声で呟く。 「いつまで自分独りの世界に閉じ籠るつもりだ…? 滉やオレを避け…想ってもくれない人を想い続けても救われないぞ?」 「…」 「そんなんじゃアンタ…」 「放っといてって言ったじゃない…それ以上言わないで」 馨の言葉を遮り楽屋に入ってしまう樹。 「はぁ…」 ため息が落ちた。 「放っといてか…本当どこまでも頑固な女…」 諦めに似た言葉を廊下に落とすと、仕方なく樹に続き楽屋に入った。 帰りの車中はこの日もやっぱり冷たい空気が張り詰めた。 .
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