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酔った足取りでカウンター席から立った女はテラスへ出て行った。
哀愁漂うその背中に興味が湧いた。
何故あんな顔をするのか…何故1人になろうとするのか…。
あの人に何を話し、何に肩を落としたのか…。
興味を惹かれ馨はグラスを置き自分の席から離れた。
女が何を思ってテラスに出て行ったのか確かめようと思ったのだった。
涼やかな風が吹き抜ける、私はポケットからタバコを出して火を着けた。
白い煙りが空を舞い、心の中の霞みのように見えた。
一方通行な想い…。
空に舞う煙りのように受け止めるものはなく…空中に消えていく。
虚しさが湧き目尻に涙が滲んだ。
「女がタバコを吸うな…」
突然聞こえた低い声に私は振り返ると、壁に背を預けた馨が出入口に立っていた。
「私はタレントじゃないんだから…どこでどれだけ吸おうが勝手でしょ?」
「よくそれでアメリカでやってけたな…アンタ…本当に仕事出来るのか?」
「自分で自分を評価したことないから知らないわ…」
「へぇ…もっと自信過剰なヤツだと思ってた…」
「…」
私は無言で彼を睨んだ。
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