薬指

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フッと軽く頬を歪めニヒルに笑った馨が言った。 「社長はアンタが担当するタレントは売れると言っていた…。 もしかしたらその綺麗な顔と身体で…タレントのために仕事とか取って来てたりしてな?」 話しながら歩み寄った馨は私の目の前まで来ると、いきなり顎を掴み値踏みするように上を向かせ顔を近付けた。 「…」 「反論しないのか?」 「…当たらずも遠からずね」 真っ直ぐ見つめ返し馨を睨んだ。 「フフフッ…じゃあ…オレもお願いしようかな?」 「えっ?」 「アンタが抱かせてくれたら…もっと仕事にやる気が出るかもしれないだろ? そしたら人気も上がってアンタの株も上がる…いい方法じゃないか?」 「…そうね…そんなことで頑張るなら…それでもいいかも…」 私はシレッと言い返した。 「そうか…じゃあ楽しみにしてるよ…」 最後に一度クスッと笑われ私の顎を解放し去って行く。 少しホッと息をついた。 距離の近さや言われたことの失礼さなんてどうでも良かった…。 信じられなかったのが…自分自身。 愛してもいない男に“抱かせろ”と言われ動揺しない自分が信じられなかった。 .
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