薬指

15/17
前へ
/899ページ
次へ
納得いかない思いを抱いたまま会場に戻った。 遠くのカウンター席にまた目を向けると、篤史さんの隣に見たことのある男性が座っていた。 (あれは…) そう思ってジッと見ていたら、私の視線に気付いたかのように彼が振り返った。 サングラスを掛け長髪を纏め結い、スリムのデニムを履いた男性は、胸元がちらつくほどシャツを開けて着、幾重ものシルバーアクセが覗き見えた。 彼は立ち上がり私に向かって歩み寄る。 (サクヤ…さんだったわよね…) 男性の正体が理解出来た時には彼は目の前に居た。 「君があの子たちの新しいマネージャー?」 小首を傾げ私の目線に合わせ落とし見つめる。 「そうですけど…」 サングラス越しにジッと流し見られた。 値踏みされたようで不快に感じる。 私はムッとした顔で彼を見返した。 「へぇ~♪結構綺麗な顔してるね♪」 「え…」 一瞬耳を疑った。 「結構好みかな♪彼氏いるの?」 「いませんけど…」 「じゃあオレと付き合う?」 反対の方向に首を傾げ可笑しそうに彼が微笑んだ。 .
/899ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1390人が本棚に入れています
本棚に追加