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わざわざ誰にも声を掛けられない会場の隅の席に落ち着いた。
更に遠くなった篤史さんをため息を溢し見つめる。
想いを告げることも…伝えることも辛い…でも…諦めることはもっと辛い。
どうすればいい…こんなに近くに居られるようになったのに…。
隠し伏せてきた想いは膨らむ一方なのに、自分を見てくれない人を想い続けることが辛くて仕方ない。
カウンター内のバーテンにおかわりを頼むとサクヤはまた篤史の隣に座った。
「よく見たらそっくりだったね」
「あぁ…彼女のことか…」
サクヤの言う人物がだれか見当がつくかのように篤史は返答した。
「昔の操ちゃんにそっくりだ…。気が強いとこは似てないみたいだけどね♪」
「いくら姉妹でも…性格までは似ないんじゃないか?」
「そうかもしれないけどさ…お前も本当はビックリしたんじゃないか?あまりにも似てて…」
篤史の反応を見るように流し見たサクヤ。
「まぁ…最初はな…」
グラスに目を落としたまま篤史は何でもないように呟いた。
「あまりにも似すぎて妹でもいいなんて思ったりしてる?」
「悪趣味なこと言うな…」
「ハハッ♪言ってみただけ」
「フン…」
「オレはこっちの方が好みかな♪清純派も悪くないけど、組み強いて言うこと訊かせたくなるような女の方が面白そうだし♪」
「タレント同士や社員との恋愛は御法度だぞ?」
「よく言うよ!昔真っ先にしたのは自分のくせに…」
「…」
「挙げ句もう居ない女に執着してるなんて…お前が可哀想で仕方ないよ…」
酒を飲み干し大きなため息を吐いたサクヤは篤史の顔色を窺うと目を細めた。
左手の指輪をジッと見つめる。
「篤史…お前もういい加減…!!」
(忘れろ!!)
そう言おうとした、その時
「サクちゃん!それ以上は言っちゃダメ!!」
後ろから現れた学の一声でくぐもった空気は止められた。
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