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ジリジリ部屋の奥へ入ろうとする滉
後ろ歩きのような形で進んでいるうちに、踵が躓き転んでしまった。
滉も巻き沿いをくい二人は重なり合うように床に倒れた。
「痛い!!」
「おい!!大丈夫か?」
重なったまま樹の顔を覗き込むと、あまりの顔の近さに滉を突き飛ばした。
「痛ぇな!!」
「何するのよ!!」
「はぁ!?お前だって受け入れてたじゃねぇか!?」
「し、知らないわよ!!今すぐ出てってよ!!」
「な、お前!!」
「どういうつもりか知らないけど!二度とこんなことしないで!!私は…篤史…」
「えっ?…篤兄?…篤兄がなんだよ!?」
「なんでもない…いいから出てって…」
篤史の名前を出した途端樹の声は小さくなり顔を背けた。
今にも泣き出しそうな顔を見て、滉は怒ることも問い詰めることも出来なくなってしまった。
小さく震え蹲る…少しの後悔が生まれた。
でも…滉は言わずにはいられなかった。
静かに立ち上がると滉は背を向け溢れる気持ちを口にした。
「お前が…どういう意味で俺のキスを受け止めたか知らねぇけど…これだけは言っておく…。
俺は…俺はお前のことが好きだった!ずっと…ずっと前からお前をな!!
久しぶりに会えて…すげぇ嬉しかったんだからな…」
「えっ…?」
振り向いた時にはもう滉の背中は消えていた。
(ずっと…前から…?)
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