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数日後、飛行機内ビジネスクラス
私は日本から送られた資料に目を通していた。
男の部屋で朝を迎えたあの日…社に向かったら“日本に帰って欲しいと連絡が入った”と言われた。
私が勤めていたエージェントはアメリカのタレントを何人も抱えるそこそこの事務所で、私は朝を迎えたあの男の担当だった。
“帰国しないでくれ!!”と言う彼を捨て、今私は日本行きの機内にいる。
開いた資料には帰国後私に担当して欲しいという日本人のタレントの諸々の内容が記されていた。
「アイドルか…やりにくそう…」
小さな溜め息を漏らし隅々まで見た。
最後に送信者の名前に目を止めた。
“高良篤史”
紙面に小さく記されたその名前。
感嘆の息を落とし
「篤史さん…元気にしてるかな…」
そう呟いた。
名前部分を切なげに指で撫でる。
(久しぶりに会える…)
もう会ってはいけない…会う資格なんてないとわかっていても彼からの帰国命令がすごく嬉しかった。
少しは私に会いたいと思ってくれているだろうか…私を昔とは違った目で見てくれるようになるだろうか…。
もしかしたら…私を愛してくれるのでは…。
私の期待はけして小さくなかった。
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