日記

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「あの時の…」 胸の中の樹がやっと思い出したのか俺を見つめた。 「やっと思い出したのかよ…」 「だからあの子姫って…」 「そうだよ!お前が名付け親!!早く気付けよな!」 「そっか…」 「だから…俺はあん時からずっとお前のこと好きだったんだぞ…。 俺にとっては…忘れられない出逢いだったんだからな!! いつ会えるかもわかんねぇ女をさ…ずっと想い続けて10年も経っちまったんだよ!! もっと早く思い出しやがれ!!」 「ごめん…」 樹は申し訳なさそうに俯いた。 「謝んなよ…お前が悪いわけでもねぇし…」 「うぅん…もし私があの後…篤史さんを好きになったりしなかったら…もっと早く会ってたかもしれなかったから…」 「ん?篤兄を好きになるのと…どう繋がりがあんだよ?」 「…」 自分で言いかけたことなのに、俺が追及すると樹は唇を引き結び黙りになった。 「おい?」 聞き直そうと顔を覗くと 「ここで何してるんだ!?」 部屋の入り口に篤兄が立っていた。 「あ…」 篤兄の姿を見て樹は小さな声を漏らした。 冷たい視線で俺たちを見る篤兄。 その視線に耐え兼ねたのか樹は俺の腕からすり抜け、篤兄の前を横切り走って出て行ってしまった。 「おい!!」 追いかけようと俺も部屋を出ようとしたら…。 「彼女はここで何してた?」 篤兄に腕を掴まれた。 「別に何もしてねぇよ!!」 (篤兄が原因なんて言えねぇし…) 「…」 訝る目で俺を見てくる篤兄。 「放せよ!!」 何も知らない風な顔をする篤兄にむかついた。 ゆっくり俺を解放した篤兄を横目に、俺は逃げるように走り去った樹を追いかけた。 .
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