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樹が滉の部屋を飛び出るようにしてドアを開けたら、樹の部屋のドアの前に背を凭れさせ馨が立っていた。
「アンタ…滉の部屋で何してた?」
鋭く怒りを顕にした視線が樹を貫いた。
「何もしてない…」
疲れきりか細い声で答えた。
「そんなわけない…オレがどれだけ前からここで待っていたと思ってるんだ?」
「…」
ポケットから鍵を取り出し、あたかも“退いてくれ”と言わんばかりに目の前に立った。
「滉に…身体でも慰めてもらったのか?」
冷たい視線が更に樹をいたぶる。
「…」
返事も面倒くさく冷めた目で見つめ返した。
すると、手首を掴まれ引き寄せられた。
逃げることも許されないように腰と首を掴まれ抱き寄せてくる。
「…!?」
身動きが取れず身体は固まり小さく震えた。
「瞼を腫らすほど…どうせ社長のことで泣いたんだろ?
それを…社長に似た滉に慰められでもしたか?」
「!!」
首を掴む手に力が加わる。
馨のナイフのように人の心を抉るセリフに怒りが生まれた。
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