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ある雨の降る日でした。
コンクリートでできた道が何本にも別れて続く小さな町で、ある少年が傘も差さずに立っていました。
少年は通り過ぎるすべての人に言いました。
「僕を殺してください」
この言葉に、あるおじさんは、
「ふざけんなっ!」
と一喝しました。
この言葉に、あるおばさんは、
「若いんだから、命を大切にしなさい」
と憐れみました。
ですが、だいたいの人が少年を変な目で見て通り過ぎていきました。
「僕を殺してください」
少年は、目の前を通りすぎようとした、ヒゲがフサフサの目つきの悪い熊のような男の人に話しかけました。
男は返事を返しました。
「おい、ガキ。死にてぇのか?」
「はい」
「なら、なんで自殺しない?」
少年は男の問いに、悲しそうに答えました。
「僕は、殺されたいんです」
「なぜ?」
「僕はこの世にあるほとんどの被害を体験したからです。
僕は、虐待、いじめ、暴言、暴力、詐欺、盗み、強姦、復讐・・・・・・・・・言いあらわせないほどの被害にあいました。
両親は強盗に殺されました。僕は無一文です。もう生きていたくありません」
「死にたいのはわかった。
それで、なんで殺されたいんだ?」
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