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それから、3日経ちました。
バクは相変わらず、古い事務所のソファに座って、新聞を読んでいました。
「今日の一面は………ああ、通貨を偽造した○×株式会社か。まだ騒がれてるなあ」
そんなくだらないことをつぶやいていると、事務所のドアが開きました。
「いらっしゃ………」
バクは、言葉を止めました。
ドアの前には、あの時の息子が立っていました。
「相談、いいですか?」
息子の声は、今にも消えてしまいそうでした。
バクは、頷いて言いました。
「どうぞ………お座り下さい」
息子は素直に座りました。バクが、お茶を用意します。
「今日は、どのようなご用件で?」
「俺の夢………食べて下さい」
バクは驚いたように息子を見ました。息子は弱々しく付け足します。
「会社、継ぐことにしました」
「あんなに嫌がってたのに?」
「わかったんですよ。世の中金だって。あの後、オヤジから逃げ出した後ですけど、バンド仲間のところに行ったんです。そしたら………買収されてました」
「買収?」
「オヤジが、金渡して二度と俺に関わるなって。あいつら、結構金もらったらしくて、あっさり同意したみたいです」
「機材を目の前で壊すだけじゃなかったんですね。お気の毒です」
バクは、感情をこめていいました。
「だから、俺もきちんと金持ちになって、幸せになります。そのために、もう二度と夢を引きずらないように、夢を俺の中から追い払って下さい。オヤジから金はもらったので、いますぐやっちゃってください」
テーブルの上に、ぶ厚い札束をドンと置きました。
バクは首を振って札束を丁寧に返します。
「当店では、一切お金をもらわないことになってます。それに、あなたが夢を無くしたいなら、いますぐやりますよ」
そう言って、バクは立ち上がり、歩き出しました。
古い事務所の、何もない白い壁まえで、止まります。
「こちらです」
壁を押すと、壁は回転しました。
中にはもう一つ部屋がありました。
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