バクの夢喰い相談所①

5/7
前へ
/66ページ
次へ
それから、3日経ちました。 バクは相変わらず、古い事務所のソファに座って、新聞を読んでいました。 「今日の一面は………ああ、通貨を偽造した○×株式会社か。まだ騒がれてるなあ」 そんなくだらないことをつぶやいていると、事務所のドアが開きました。 「いらっしゃ………」 バクは、言葉を止めました。 ドアの前には、あの時の息子が立っていました。 「相談、いいですか?」 息子の声は、今にも消えてしまいそうでした。 バクは、頷いて言いました。 「どうぞ………お座り下さい」 息子は素直に座りました。バクが、お茶を用意します。 「今日は、どのようなご用件で?」 「俺の夢………食べて下さい」 バクは驚いたように息子を見ました。息子は弱々しく付け足します。 「会社、継ぐことにしました」 「あんなに嫌がってたのに?」 「わかったんですよ。世の中金だって。あの後、オヤジから逃げ出した後ですけど、バンド仲間のところに行ったんです。そしたら………買収されてました」 「買収?」 「オヤジが、金渡して二度と俺に関わるなって。あいつら、結構金もらったらしくて、あっさり同意したみたいです」 「機材を目の前で壊すだけじゃなかったんですね。お気の毒です」 バクは、感情をこめていいました。 「だから、俺もきちんと金持ちになって、幸せになります。そのために、もう二度と夢を引きずらないように、夢を俺の中から追い払って下さい。オヤジから金はもらったので、いますぐやっちゃってください」 テーブルの上に、ぶ厚い札束をドンと置きました。 バクは首を振って札束を丁寧に返します。 「当店では、一切お金をもらわないことになってます。それに、あなたが夢を無くしたいなら、いますぐやりますよ」 そう言って、バクは立ち上がり、歩き出しました。 古い事務所の、何もない白い壁まえで、止まります。 「こちらです」 壁を押すと、壁は回転しました。 中にはもう一つ部屋がありました。
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加