バクの夢喰い相談所①

6/7
前へ
/66ページ
次へ
中の部屋には、壁には動物のバクの絵のタペストリーがあり、絨毯にはなんだかわからない文字が書いてありました。 一見、インドの怪しい占いを思い浮かべるような作りでした。 「こちらで、夢を喰う儀式を行います。さあ、お座りください」 息子に、紫の座布団を差し出しました。息子は日本人らしく、座布団に正座で座ります。 バクは、4本のお香を取り出して、四方に配置しました。 火をつけると、小さな部屋中に煙と甘ったるい匂いが充満しました。 「儀式は一瞬で終わります。最後に聞きますが、ほんとうによろしいですか?」 「夢を無くすことに揺るぎはありません。ですが、質問………いいですか?」 「私ですか?どうぞ」 「あなたは、この仕事で一切お金をもらわなかった。もうかってないでしょ?」 「ええ」 バクは嘘をつく理由がないので、正直に答えました。 「あなたは、お金があることが幸せだと思いますか?貧乏が不幸だと思いますか?」 息子の質問に、バクは少し悩んでから答えましたた。 「今の世で、金はあって損はないと思います。なんだかんだ言っても、ないと不便ですから。 ですが、金持ちが幸せなわけでも、貧乏が不幸な訳でもないですよ。幸せも不幸も、お金だけで全て決まるわけではない………と思ってます。これで、よろしいですか?」 息子は頷きました。納得したのか、そうでないのかはバクにはわかりませんでした。 「では、やります」 息子は頷きました。その瞬間、今まで漂っていた煙が、形をつくりはじめました。 それは、バクという動物の形になりました。 煙りのバクは、息子に襲いかかりました。 そして………
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加