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中の部屋には、壁には動物のバクの絵のタペストリーがあり、絨毯にはなんだかわからない文字が書いてありました。
一見、インドの怪しい占いを思い浮かべるような作りでした。
「こちらで、夢を喰う儀式を行います。さあ、お座りください」
息子に、紫の座布団を差し出しました。息子は日本人らしく、座布団に正座で座ります。
バクは、4本のお香を取り出して、四方に配置しました。
火をつけると、小さな部屋中に煙と甘ったるい匂いが充満しました。
「儀式は一瞬で終わります。最後に聞きますが、ほんとうによろしいですか?」
「夢を無くすことに揺るぎはありません。ですが、質問………いいですか?」
「私ですか?どうぞ」
「あなたは、この仕事で一切お金をもらわなかった。もうかってないでしょ?」
「ええ」
バクは嘘をつく理由がないので、正直に答えました。
「あなたは、お金があることが幸せだと思いますか?貧乏が不幸だと思いますか?」
息子の質問に、バクは少し悩んでから答えましたた。
「今の世で、金はあって損はないと思います。なんだかんだ言っても、ないと不便ですから。
ですが、金持ちが幸せなわけでも、貧乏が不幸な訳でもないですよ。幸せも不幸も、お金だけで全て決まるわけではない………と思ってます。これで、よろしいですか?」
息子は頷きました。納得したのか、そうでないのかはバクにはわかりませんでした。
「では、やります」
息子は頷きました。その瞬間、今まで漂っていた煙が、形をつくりはじめました。
それは、バクという動物の形になりました。
煙りのバクは、息子に襲いかかりました。
そして………
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