Chapter0“息子”

2/3
前へ
/80ページ
次へ
「………………。」 月明かりに照らされたバルコニーに、彼はいた。 色が抜け落ちてしまったかのような純白の髪が夜風になびく。 淡い光を放つ銀色の月を見上げ、彼は静かに吐息を漏らした。 その表情は憂いに満ちており、頬には涙のあとが残っていた。 「ここにいらっしゃいましたか、クオレリュード。」 そんな声に彼はハッと我に返り、自身の目頭をそっと押さえる。 振り返ると、亜麻色の髪を腰の辺りまで垂らした女性と、金髪隻眼の青年が立っていた。 クオレリュードと呼ばれた青年は、苦笑いを浮かべながら自分に声をかけてきた女性の方を見る。 「そう呼ばなくてもいいって言ってるだろ?長くてめんどくさいんだから。」 そう言って頬を膨らませる彼に隻眼の青年が笑った。 「こいつは真面目だからな。クオレも少しは見習ったらどうだ?」 隻眼の青年が女性を一瞥し、笑いながら言った。 クオレリュードはそれに肩をすくめる。 「はは、遠慮しておくよ。」 と、そう軽く笑ったクオレリュードの表情が真面目なものに変わった。 「……で、どう?“彼”の行方は掴めた?」 その問いに、女性と青年の表情が曇る。 「そのことなのですが………」 女性が重い口調で語り始める。 その話が進むにつれ、柔和だったクオレリュードの表情がどんどん厳しいものへと変化していった。 「………なるほど…ね。」 話を聞き終え、吐息混じりに呟く。 「やはり、あそこに行った……か。」 夜空を見上げながら納得したようにそう呟いたクオレリュードの表情は憂いに満ちていた。 そんな彼を、青年は心配そうに見つめる。 「………本当にやる気か?」 青年が心配そうにそう尋ねた。 「そりゃあもちろん。」 クオレリュードはそれに迷わず頷く。 決意に満ちた金色の瞳がまっすぐ青年を見据えた。 「僕には……自らの犯した過ち(つみ)を償う義務がある……」 そう言いながら、クオレリュードはバルコニーから屋内へと入る。 →
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加