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【Page1】
「ホント、びっくりしたよ。」
ブランコから立ち上がり、渚は軽く笑った。
「“魔法”が存在するなんて、考えたこともなかった。」
その視線は、ブランコに座ったままの龍太の膝の上に置かれた1冊の本に注がれている。
「……俺だって、そんなの空想上のものだと思ってたさ。」
膝の上に置いていた魔法の本を手に取り、星の輝き始めた空を見上げながらため息をつく。
「俺……こんなんでやってけんのかな……?」
不安げにそう呟いた彼を渚が振り返る。
「龍太なら大丈夫だよ、絶対。」
真面目な表情でそんなことを言い出す彼女に留偉は苦笑を浮かべた。
「“絶対”ってなぁ……。」
ブランコから立ち上がり、呆れたように渚を見る。
「信じられねーだろ、そんな“絶対”とかって。」
だが、それでも彼女は真面目な表情のままだった。
「…考えてみなよ、“魔法”とか“魔道師”って……現実離れも甚だしいよ、ホント。」
魔法の本を手にし、魔道師となった幼馴染みを見つめながら渚は続ける。
「現実なんて考えるだけ馬鹿馬鹿しい…って思っちゃうよ。」
と、そこで表情が和らぎ、彼女の口許に笑みが浮かんだ。
「だから、もっと夢見たっていいんじゃない?」
晴れ晴れとした明るい表情でそう笑いかけてくる。
「1つぐらい、信じてもいい“絶対”があったっていいじゃん。」
その言葉には力がこもっていた。
それに、今まで自分は何に悩んでいたんだ、と龍太に思わせてしまうほど。
彼は無性に馬鹿馬鹿しくなって笑う。
我ながら単純だとは思うが、確かに、先のことばかりを考えても仕方がない。
「そうかもな。」
そう頷いた龍太の声には、前向きな意思が込められていた―――――
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