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「で、読み終わったのか?その本。」
「あぁ、あと後書き読んで終わりだ。」
そう軽く言った総矢に竜樹は再び苦笑を浮かべる。
「お前、やっぱしそこまで読んでるのか……。」
「当たり前だ。」
「普通は読まないと思うけどな。」
さも当然のように言い放つ総矢に竜樹は呆れたように肩をすくめる。
と、そこで、教室の入り口から他クラスの男子生徒がひょっこりと中を覗き込んできた。
男子生徒は竜樹の姿を見るなり片手を挙げて彼を呼ぶ。
「竜樹ぃ!部活行こーぜ!」
どうやら部活の友人らしい。
「おう!今行く!」
そう片手を挙げて答えると、竜樹は総矢に向き直った。
「じゃ、またな。」
「あぁ、頑張れよ。」
総矢の言葉に頷くと、竜樹は教室を後にした。
その姿を見送り、総矢は再び本を開いた。
傾いた日の差し込む教室で暫く後書きを読んでいたが、数分して、総矢は本を閉じた。
大きく伸びをし、椅子から立ち上がる。
「……さて。」
本を鞄にしまい、教室の電気を消す。
「俺も行くか。」
そう呟き、彼も静まり返った教室を後にした。
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