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智ヶ崎高校の第2図書室は人が全く訪れない教室である。
最新の本や新聞、人気書籍などが揃った第1図書室を利用する生徒は多いが、数十年前の作品など、古い本が置かれた第2図書室を利用する生徒は本当に少ない。
というより存在を知っている生徒が少ない場所だった。
第2図書室の存在を知らぬまま3年間を過ごし、卒業してしまった者も中にはいるだろう。
現在、第2図書室は鍵をかけられ、学校司書の先生に鍵を借りなければ利用することはできない。
そのため、生徒たちの間では「開かずの間」と噂され、敬遠されていた。
が、そんな第2図書室を利用する者がまだ入学して半年も経たない第1学年の生徒の中にいた。
「あ~、やっぱしねぇな。」
総矢は閑散とした放課後の第1図書室で吐息混じりにそう呟いた。
どうやら目当ての本が見つからないらしい。
「先生、やっぱしなかったわ。」
本の貸し出しを行うカウンターの内側でパソコンをいじっていた老人教師は、カウンターの方までやって来た総矢を見上げた。
「ん~?そうかぁ?確かにこの学校にもその本はあったはずなんだがなぁ……。」
困ったように老人教師は首を捻る。
と、ふと思い付いたように顔を上げ、総矢にこう言った。
「じゃあ第2の方にもあるかもしれないな、古い本だし。」
「あぁ、確かに。じゃあ第2の方見てみるよ。つーわけで、鍵貸して。」
総矢は鍵を受けとると、第1図書室を出て司書室と倉庫を挟んで奥にある第2図書室へと向かった。
ドアにつけられた古びた錠を慣れた手つきで開け、第2図書室の中へと入っていく。
そう、第2図書室を利用する1年生とは総矢のことである。
入学してから毎日のように第1図書室に通っていた彼は、本を借りている内に第2図書室の古本も借りるようになったのだ。
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