A HEART STAIN

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「で、今日はまたなんですか。」 「や、肉食いたくてさー、なんかすっげ肉ーー!ってなる時ない?しかも赤い肉。牛限定で。」 「ああ。…」 それはまあわからんでもない。と、中丸は半分納得し目の前のメニューを見ている赤西に適当に頷いた。 綺麗に脂のさしが入ったカルビをトングを使って網の上に並べていると 「なかまるー、上タン塩も頼んでいー?」 「おいこら、俺が奢るていの言い方すんな!しかも上って!」 「やっぱり中丸さんくらいともなれば基本、上っすよね?いや、すいません、特上っすか?じゃ、特上タン塩にしますね。」 「聞いてんのか、おい!」 すいませーん!と、中丸に構わず敷居の向こうに呼びかける赤西。 店員が来ると迷わず特上タン塩を注文して「あ、これも!」と中ジョッキも追加している。 なんだか楽しそうだ。 しかしなぜ誘われた自分が奢らなければいけないんだと思う中丸は、店に入った時から…いや、電話をしてきた時点ですでに妙なテンションだった赤西を、立ち登る香ばしい油煙の隙間から睨んだ。 実際中丸にはそのおかしなテンションの訳を実はなんとなく知っていた。 しかし確信を持っていたわけではないので赤西の反応によって見極めようと探りの意味も込めて、冒頭何か話でもあるのか、と問いかけていたのだ。 赤西はそれをあたかもナチュラルにスルーしたつもりかもしれないが、さっきから目を合わせない素振りやポケットの携帯を弄る落ち着きのない行動からおおかた予測は間違っていないようだ。 . .
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