A HEART STAIN

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赤西は中丸の焼いてくれたカルビをパクリと口に入れた。 噛んだ瞬間に溢れる肉汁と旨味に思わず喉を鳴らして「うまっ」と言った。 そこそこ値の張るこの店の肉は、普通のカルビでも肉の厚さは半端なく、それでいて脂はさっぱりとして胃にもたれない。 これから来る赤西すらこの店では未だ頼んだことがない特上のタン塩が今から楽しみになった。 赤西が2枚目のカルビを口に入れようとした時、ようやく中丸が網から自分の肉を取り上げてタレに付けている。 「焼きすぎじゃね?」 「いや、いいんだって。これくらいで。」 そういって中丸が口に運んだカルビの端っこが香ばしく焼けている。つまりは焦げていて、中丸は口に入れた肉を「あっちっ!」 と言って一旦引き上げて、ふうふうと冷まし、また口に戻した。 「うまっ!」 目を見開いてのオーバーリアクションは焦げていたって正しいだろう。 「だろ?」と頷き、自分も熱さに注意しながら口に運んだ。 柔らかく、けどしっかりした歯ごたえのあるカルビを、冷えたビールで流す。 「っ、あ゛ー」 最高だ。 喉で弾ける炭酸がたまらずなんとも親父くさい声で唸った。 向かいに座る中丸も同じようにビールをグビグビと煽り、くぁー、などと言っている。 二人して親父みたいだ。 今だったらビールCM絶対イケる。 この組み合わせが最高だなんて思うようになった自分たちも歳をとったんだなと思う。 まだほんの数年前はこんな所は先輩や事務所の人間に連れてこられでもしない限りとても入れなかった。 6人でテーブルを囲んで ドリンクはコーラだった。 焼きあがる前の肉を聖や亀梨と捕りあったこともあった。 今はビール片手に、一皿は当時からしてみれば何倍もする高級肉。 6人一緒の飯なんて年に一度全国を回るコンサートの夜にあるかないかくらいだ。 (変わったんだよな、色々と。) 赤西は向かいの中丸を、傾けたジョッキ越しに見据えながらそんなことを考えていた。 .
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