A HEART STAIN

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さて、なんて切り出そうか。 中丸がカルビ4枚をリミットとして切り出す機会を設けてくれたのに、赤西はそのタイミングを旨いビールと肉にすっかり奪われてしまっていた。 そもそも焼き肉屋というチョイスが失敗だっただろうか。 どうしたって焼く作業に集中してしまう。 実際、店なんてどこでも良かったのだ。ただ、モヤモヤした時は手始めにがっつり胃を満たしたい。そんな欲望のままに焼肉を選んだだけで、実は連れ添う相手のほうがよっぽど重要だ。 胃袋は適当な店に任せられても、湿っぽい恋話はいつものメンバーという訳にはいかない。 かといって女友達もなんか違う。 赤西は普段こそ中丸と遊んだりしないけれど、恋の、いや、彼との相談事はこの中丸雄一という男限定で頼り切っていたのだ。 口をもぐもぐとさせながら、赤西は手持ち無沙汰から、中丸の手元にあったトングを掴んで皿に残ったカルビを隙間なく網に乗っけた。 肉の端が網からはみ出している。 赤西はいたずらをしでかした子供のようにこっそりと含み笑い、中丸がそれに対して乗っけ過ぎだろ!と突っ込まれるのを待っていた。 しかし網を見据えた中丸の口からは予想にしない台詞が飛び出した。 「亀となんかあったんだろ?」 じゅう…、と旨そうな音がカルビから上がる。 「え、うん…まぁ。あるといったらある…ような、ないような…」 再度機会を与えてくれた中丸に感謝だ。 そう思うのに、赤西は曖昧に答えるしか出来なかった。 いきなりど真ん中を突かれる準備がまだ出来て居なかったのだ。 赤西は自分がたった今網に乗せたばかりの肉を一枚、二枚と裏返して、三枚目で早すぎたことに気づき、また一枚、二枚と元に戻すというおかしな行動を取った。 動揺を隠せないまま、ははっと自嘲気味に笑ってみたが、中丸はぴくりともせず、ただじっと焼き網の肉を見つめている。 「あのー、なかまるさん…?」 声に応答はない。 赤西は何かまずいことでも言ったのか? あれ、なんだろう。と眉を下げ、中丸の表情を覗き込むようにして 伺った。 「あの… 」 「赤西…」 「はい、…」 「……乗っけ過ぎだ。」 「おそっ!」 「ははっ!お前何敬語になってんの」 「…くっそ、はなまる…」 「なかまるだから」 「…ち、なかむらのくせに」 「こら」 やっと思い通りに突っ込みをしてくれた中丸に赤西は満足げな笑みを返した。 .
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