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ベルナップの前を通り過ぎ、扉に向かって足早に動く。
あと3m。
1m、50cm‥
やった、扉の前だ。
扉を開けようと腕を伸ばす―――
「…おい。」
パシッ
取っ手を掴もうとした手が誰かに掴まれた。
“誰か”
この部屋に俺の手首を掴めるなんて一人しか居ない。
ベルナップだ。
グッと掴まれた手首に力が加わる。
物凄い握力だ。
あまりの力に俺の顔が痛さに歪む。
腹の底から出されたベルナップの低い声。
泣く子も黙るような…。
今更ながらに恐怖心でいっぱいになる。
身体は情けなくビクビク震え、震えは止まらない。
「ひっ‥」
上擦った声が漏れる。
「ははっ‥…そんだけ怯えなくてもいいんだよぅ?
―――可愛いねぇ。」
いつものように可愛いらしい笑顔を浮かべていたと思ったら…。
突然、恍惚とした表情を浮かべ、俺の頬を触ってきた。
ベルナップの態度に身の危険を感じ、後ずさる。
扉の前まで来ていたので、背中が背後の扉にすぐトンッと当たる。
ヤバ…っ
顔の横にベルナップの腕があって、俺が逃げられないようにされていた。
「ひっ‥い、いやッ」
虚しい抵抗。
必死に横にあるベルナップの腕を退かそうとするが…。
びくともしない。
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