四年前

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彼は後ろに吹っ飛んで、仰向けに倒れた。 僕は彼の胸に数回蹴りを入れて、呆然としながらこっちを見ている長身の生徒に声をかけた。 「用があるなら自分で来てくれ。僕は君と君の周りにいる三人と仲良くなりたいんだ」 これが精一杯の挨拶だった。 この言葉で彼等と歩み寄れたらどんなに良いことだろう。 足下に倒れているこの男は、これから辛いことになるだろうが。 だが、そんな期待とは裏腹に長身は震えた声で、上等じゃん。この後体育館裏で待ってろよ、やってやる、と言った。 なんてことだ。 だが、今更その場で「そういうことじゃないんだよ」なんて言えるはずもなかった。 2人きりになったところで誤解を解こうと考えた僕は、わかった、待ってる、とだけ告げると、鞄を取り教室を出た。
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