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今まで一度も感じたことのない感覚で僕は目を覚ました。
出窓から吊り下げられた黒色のカーテンが少し開いていて、その隙間から日の光が僕の顔を照らしている。
僕は左手で顔を覆いながらソファから上半身を起こすと、テーブルの上に置いてある灰皿の中のまだ吸えそうな吸い殻を手に取って、初めてその妙な感覚の正体を探ることにした。
脳の中心の辺りが高速で収縮と膨張を繰り返すような感覚だった。
ただの夢だったのかもしれない、と考えたが、どれだけ頑張っても夢の内容は思い出せなかった。
くしゃくしゃになっている煙草を口に咥え、火をつけて煙を深く吸い込む。
息を止めたまま、天井を見ると、シーリングファンがゆっくりと廻っている。
それとも、と考えながら煙をファンに向かって吐き出す。
それとも、あれは脳が出した信号なのかもしれない。
小学校のとき、学校をズル休みしたくなった日の朝は決まって踝とヘソのあたりが痛くなったものだ。
もしかするとその延長なのかも。
そこまで考えて、思わず吹き出してしまった。
何を真面目に考えているんだ。忘れていただけで、あんな感覚は今までだって感じたことがあるのかもしれない。
「そうだ、そんな気がしてきた」
そう呟くと、テレビのリモコンに手を延ばして電源を点けた。
テレビの向こうではアナウンサーが興奮気味に喋っている。
どこか遠い海の向こうの小さな島で火山が噴火したらしい。
上空から撮影された火山の映像を見ながら煙草と携帯電話、小銭入れをジーンズのポケットに入れるとソファから立ち上がり、テレビの電源を消した。
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