父の筆跡

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外に出ると高そうなスポーツカーが止まっていた。どうやら陣内さんが迎えに来てくれたようだ。 早大達、いや、母親の姿が見えたのを確認して、ドアから顔を出す。 出ないんだったらいっそ窓をあけるだけでもいいんじゃないかと思ったが勿論それを本人に言うことはない。 「一枝さん、それに早大くんも久しぶり」 「あら、誠さん。迎えに来てくれたの?」 「ああ、待ちきれなくてね」 「もう、誠さんったら」 爽やかな笑顔で語りかける。早大ではなく母に。ついでに早大に。 「さあ乗ってよ、直接僕の家に行こう。どうせもう荷物は殆ど運んであるんだ。一日や二日ずれたくらい大丈夫だろ」 「ええ、楽しみだわ。やっとあなたと暮らせるのね」 「そうだな。早大くんにとっても新しい家というわけだ。遠慮しないでくつろいでくれよ」 「あら、私には何も言ってくれないの?」 「おや、君は僕に遠慮して接していたのかい?だとしたら残念だ」 「もう」 延々と、二人だけの会話が続く。 そもそも早大はもうすぐ受験で進学先は県外で一人暮らしになるため陣内さんの家で過ごす期間は僅かだ。 必死に部活を頑張って野球の特待生での受験を希望したのは自分だがそれは母と陣内さんの希望でもあった。 もう分かっていたがこの二人にとって自分は邪魔なのだ。 新しい恋人が出来たとき連れ子が邪魔なことくらい知っている。 だんだん二人が何を言っているのか分からなくなってきたところで目的の陣内さんの家に到着した。
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