prolog

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 深白(ミシロ)は、自身が今措かれている状況を内心で嘆いて小さく溜息を吐いた。  現在地は『清掃中』の立て札が掛かった女子トイレ。  おまけに、目の前には顰め面で仁王立ちする新人群(サルヤマ)のリーダー。  つまり、女ボスというやつだ。    先に言っておくが、もちろんこの女より自分の方が在歴は長い。  本来、どちらが優勢であるかなど一目瞭然で解ろうというものだが…  この女ときたら、入社して1年経ってもろくに成績も上げない癖に、妙に自己顕示欲の強いウザい奴なのだ。    …現在、このバカ女につまらない中傷(ケチ)をつけられたが為に、今のご時世ではどこにでも有り触れている『社内イジメ』という奴に遭っていたりする。  今日もまた、おつむの弱い悪意の羅列を延々と聞かされるのだろうと思うと、まさに気分はウンザリだ。  憂鬱さも立派な理由の一部だが…その理由の大半は、飽きもせずに悪意を垂れ流す目の前のこの女…。  主に、コイツのしつこさに辟易する部分が大きい。  おいおい、何故お前はこうも悪意を言うことに関しては熱心なんだ!  そんなクダラナイことに脳を使う余裕があるなら、まずちゃんとした個人の実績から上げてくれ。    コイツの口から出るのは、所を構わない低品格の会話や交友関係のある男性の話題ばかり。  なんて、バカで軽薄な女だろう。  毛虫を見る目で見て、思わずまた溜息が出る  こんな女、いっそその口ごと破滅してしまえ。  …とまぁ、ここまではいつもと同じなので、さして気にしていないが問題はここからである。  最近は、増長して力に訴え出したから堪らない。   「アンタさぁ、楢島課長と幼馴染だからってなに調子づいてんの? 気に食わないのよね、そういう態度…。興味ないような顔して、課長にちやほやされちゃってねー…どうせ、その『顔』で他の男連中にも取り入ったんだろ!?」  襟首を掴まれたそのままの格好で壁に叩きつけられ、咄嗟に息が詰まる…ふりをする。   「その髪も顔も気に食わないから、全身整形でもしちゃいなさいよ! そんで思いっきりブスになればいい!」  失笑してきんきんと嘲り笑う取りまき共。  嗚呼、やかましい。  嫉妬、執念、悋気…そんなようなものが綯交ぜになった、最早狂気じみた甲高い笑い声が頭の芯を痺れさせる。  
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