prolog

4/6
前へ
/16ページ
次へ
 自分から進んで行動する力もない癖に、つまらない燐気で他人を煩わせる暇があるのなら、その『憧れの君』に話し掛ける方が断然有意義なのが、なぜ解らない。  …理解に苦しむ。 「……」  一部の人間が自分を冷凍女やらアイス・ドールと言っているのは知っていたし、容姿がどうとか別段気にしたこともなければ、それを使おうと思ったこともない。  それに、奴らが同僚以外の何に見えるってんだ、気持ち悪い。  しばらく茶番を演じるのもいいかと思って傍観を決め込んでいたのだが…それも、もう限界だ。  ついつい本能に則って身体が動きそうになる上に、その殺戮衝動を押さえこむ気苦労に相乗して、必要以上に過保護で心配性な同期の上司に見付かった時の言い訳なんかも考えなければならないのだから。  現在の目下の悩みは、目の前の嫉妬の塊が気力を殺いでいくこと。  それに、有利なんだか不利なんだか…どんなに悲嘆に暮れて苦しんだとしても、殆んど表に感情が出ないときた。  ぐるぐる、ぐるぐる悪循環のサイクルが溜まっていく。  けど今となっては、もう麻痺してしまったのか何の感慨すら感じなくなっていた。  いわゆる、感性的不感症。  医学的な勉強をした訳じゃないから、詳しいことは解らんが。    言いたければ勝手にすればいいと思うあたり、結構重傷なんじゃないだろうか? 「聞いてんのかよ、いつもいつもスカしやがって!」  ああ、また撲たれるのかと他人事のように思いながら見ていたが、振り上げられた手が届くことはなかった。    
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加