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よく見るとそれはひとだまではなく、提灯だった。
その明かりのおかげで、私の肩を叩いた人の姿を確認できた。
‥‥‥‥が、
「着物、侍‥?おっ落ち武者の幽霊ぃぃぃ!?南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏‥‥‥ひぃい!?」
ギラリと怪しく光るのは‥落ち武者の刀ぁぁぁ!?
その刀は私に向けられていて、もう気絶寸前。
目を開けば意味のわからない場所にいて、やっと人に出会えたと思ったら落ち武者の幽霊で‥。
「刀を向けるな。そいつはどう見ても女だろう」
「わかってます。でも人を幽霊扱いしたから思わず」
あらもう一人いらっしゃるのね。
もう驚きすぎて、何にも驚かないよ‥。
刀を向けた幽霊を落ち武者Aとしよう。
で、止めに入ってくれた幽霊を落ち武者Bとしよう。
落ち武者Aは私よりも髪が少し長く、低い位置で後ろで一つに括っている。
顔は‥イケメンでした。鋭い目つきが少し怖い。
落ち武者Bは、今の私みたいにポニーテールにしている。
顔は‥イケメンでした。ていうか、どこかで見たことがあるような気がする。
落ち武者Aが刀を鞘に収めると、若干殺気を放ちながら私を見る。
「なんですかこの着物。初めて見たんですけど」
「さあな。まあ、怪しいが丸腰だし、危害は加えないだろ」
二人は私の前で会話をしている。
耳を疑う発言がいくつもあるんだけど‥。
着物?初めて見た?
いやいや、普通にワンピースだから珍しいはずがない。
幽霊だから知らない‥わけないか。
丸腰?危害?
まるで丸腰でない、落ち武者AとBのように刀を持っているのが普通みたいな言い方だ。
ようやく冷静になり始めた私は、二人の様子をよく観察してみることにした。
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