目を閉じたらあら不思議!

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浴衣に着替えるのも面倒だったから、私は昼間の格好のまま夏祭りに行くことにした。 「黙っとけば姉貴だってそこそこイケるんだよ。喋ったら台なぐはっ」 「それ以上言ったらそのイケメンな顔をぐちゃぐちゃにしてやるよ!」 「だから‥そういうとこがだな」 あきらかに私の悪いところを言いかけた直哉に、軽くアッパーをお見舞いする。 黙ってたらいいって‥それで過去の恋愛失敗してんだよぉぉぉ! 「そういえば、今日美幸サンに会ってきたんだろ?」 私が怒りのオーラを出していれば、直哉はすぐに話題を変える。 美幸は直哉と結衣とも仲が良く、家にもよく遊びに来ていた。 「うん。あ、お土産貰ったんだけど直哉これつける?」 私は美幸から貰ったお土産を鞄から取り出し、直哉に見せた。 直哉はまたかよ、と言いたそうな顔をしている。 「また新選組か。姉貴知ってんだろ?俺の携帯や鞄にたくさんキーホルダーついてるの」 「美幸の優しささ!」 「美幸サンのおかげで若干日本史が得意になったんだよな~。 人の名前とか出来事が簡単に頭に吸収されて」 美幸の力説、素晴らしい。 そして文句を言いながらも、直哉は美幸のことを好いている。 なんでも、独りだった私と友達になってくれたかららしい。 「今日も新選組の話聞いてきたのか?」 「うん。そうそう!安藤早太郎って名前が出てきてビックリしたの」 「なんで?」 「だって同じ安藤だよ? なんか頭の中にひどく印象に残ってるんだよね~」 安藤早太郎。 土方歳三みたいに写真が残っているわけでもなく、詳しいこともわからない。 そんな人物に妙に興味を持った自分がいる。 ただ安藤という姓が同じだけなんだけどなあ。
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