205人が本棚に入れています
本棚に追加
浴衣に着替えるのも面倒だったから、私は昼間の格好のまま夏祭りに行くことにした。
「黙っとけば姉貴だってそこそこイケるんだよ。喋ったら台なぐはっ」
「それ以上言ったらそのイケメンな顔をぐちゃぐちゃにしてやるよ!」
「だから‥そういうとこがだな」
あきらかに私の悪いところを言いかけた直哉に、軽くアッパーをお見舞いする。
黙ってたらいいって‥それで過去の恋愛失敗してんだよぉぉぉ!
「そういえば、今日美幸サンに会ってきたんだろ?」
私が怒りのオーラを出していれば、直哉はすぐに話題を変える。
美幸は直哉と結衣とも仲が良く、家にもよく遊びに来ていた。
「うん。あ、お土産貰ったんだけど直哉これつける?」
私は美幸から貰ったお土産を鞄から取り出し、直哉に見せた。
直哉はまたかよ、と言いたそうな顔をしている。
「また新選組か。姉貴知ってんだろ?俺の携帯や鞄にたくさんキーホルダーついてるの」
「美幸の優しささ!」
「美幸サンのおかげで若干日本史が得意になったんだよな~。
人の名前とか出来事が簡単に頭に吸収されて」
美幸の力説、素晴らしい。
そして文句を言いながらも、直哉は美幸のことを好いている。
なんでも、独りだった私と友達になってくれたかららしい。
「今日も新選組の話聞いてきたのか?」
「うん。そうそう!安藤早太郎って名前が出てきてビックリしたの」
「なんで?」
「だって同じ安藤だよ?
なんか頭の中にひどく印象に残ってるんだよね~」
安藤早太郎。
土方歳三みたいに写真が残っているわけでもなく、詳しいこともわからない。
そんな人物に妙に興味を持った自分がいる。
ただ安藤という姓が同じだけなんだけどなあ。
最初のコメントを投稿しよう!