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「見たまえパピコ君! とうとうたどり着いたぞロマンと冒険の地に!」
目の前に広がる赤松の林を抱きしめんとばかりに、両手を高らかに広げて完全にイってしまっている言葉を叫ぶ部長。
ここが深い山の中ではなく、街の中だったら絶対に誰かが警察を呼ぶに違いない。少なくとも私だったら絶対に呼ぶ。
だって部長は見かけからおかしいのだ。
今はまだ秋の中旬で、少し肌寒くなってきたところ──今は標高の高いところにいるからかなり寒く、学校指定の長そでのダサいジャージを着てきた私は後悔しているが。
でも、いくらなんでも。
ふかふかのニット帽の上に大きな冬山用のゴーグルを取り付け、何重にも着込んだダウンジャケット。
挙句の果てには、人間一人が楽勝で入るリュックを背負い、ロープやらテントやら私には用途がわからないものまで取り付けてある。
このままエベレストに直行しても構わないぜ! と全身でアピールしているファッションで待ち合わせの駅に立っているだけでも恥ずかしいというのに、「パピコくーん!」と恥ずかしいあだ名で叫ばれた日にはもう……。
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