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今登ったばかりの崖から突き落としてやろうかと、不意に殺意がわいた。
今この場にいるのは部長と私だけだし、もとはと言えば部長が「こっちのほうがロマンがある!」と別の歩いて進めるルートがあるにも関わらず、意気揚々とロッククライミングを始めたのが原因なんだから。おかげでジャージが擦り切れてしまった。
「部長。部長が後世に名を残す名案があるのですが」
「おっ、それはいったい何だねパピコ君?」
部長はポーズをやめて、食いつくように私を見つめた。輝く瞳はジャーキーを前に待てと、命令されている犬みたい。ダックス先輩じゃないけど。
「はい。まずは部長が崖から飛び降りて、頭から着地してください。あとは私が『部長は私をかばって落ちてしまった』と、ロマンあふれる死因を証言するんです。きっと部長はヒーローとして後世に語り継がれますよ」
我ながら多少無茶がある気がした。しかし部長はあごに手を当て真剣な表情浮かべていた。
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