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わたしは、不思議なものを見るような目で、大木を見つめた。
一瞬、この巨大な大木は、壁のようにも見えてくる。
だが、これは木なのだ。
恐ろしいほどの大木だが、わたしはなぜだか、心が落ち着いている。
「…なん…だろう…」
わたしは、一歩一歩、ゆっくりと近づいてみた。
縦の高さは長いが、横は、四メートルくらいだろうと思える。
大木へ近づき、わたしは側面の中央に立った。
なんとなく、この大木は、神秘的なもののように思えた。
いきなり現れたものなのに、運命的な存在に思えるのはなぜだろう…。
いや、…だからこそなのか…。
わたしは、ぐるりと、木に沿って歩いてみた。
そして、切り口にあたる場所へ行くと、あっ、とわたしは驚いた。
なんと、そこは空洞になっていたのだ。
つまり、この大木全体が、トンネルのようになっていたのだ。
わたしは目を見開き、その穴を凝視した。
「穴が開いてる……トンネル…?」
ひゅうー、と、その空洞に吸い込まれるようにして、風が吹いている。
ごくっ…
「入って…みようかな……」
なんの躊躇もなく、そんなことを口走っている自分がいた。
好奇心、不安、緊張が入り交じっていたが、その穴に向かって、一歩、足を進めた。
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