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「さ、もう大丈夫だよね。さらばだ少年、二度と来るなよ」
「……え?」
カンカンカンカン――
カンカンカンカン――
「もう、ここに来る必要なんて無いでしょ?」
鳴り始めた警報機。
不意に、力強く押された背中。
「ちょっ……!」
「バイバイ」
ゆっくりと、僕から帰るべき場所を隔離するバー。
気がついた時にはもう、二人の間には線路と二本のバーが、ここぞとばかりにとおせんぼう。
待ってよ。まだ、お礼を言ってないじゃないか。
慌てて叫んだ僕の言葉と、赤く染まった命の恩人の姿はどちらも、狙ったようにやって来た電車にすべて、かき消されていった。
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「その花束、どうするんです? 綺麗な白百合ですね」
「いや、ちょっとな。それよりも転校生さあ、敬語なんか使わなくていいって言ったろ?」
「……転校生って呼び方、止めてくれたらいいですよ」
「おう、分かった」
「一緒に帰るのは構わないけど、いきなり花屋に寄るから驚きました……あ、驚いたよ」
「なんだか今日は寄り道したい気分なんだよなー」
「寄り道って……こっちの方ってお店とかあったっけ? あ、こんな所に踏切あったんだ」
「よいしょっと……ありがとな」
「ん、何か言った? って、ここに花束置いてくの!?」
「よし、帰るぞ!」
「あっ、ちょっと待ってよー!」
「……バーカ」
おしまい
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