踏切少女は深紅に染まる

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「やあ少年。おとといぶりだね」 「ああ……」 あの後、踏切から逃げるように立ち去った僕。 それから一日経って、何事も無かったかのように、しれっとした顔で僕を出迎えた口裂けない女。 「ん、どうしたの? そんな浮かない顔をして」 「いや、別に」 「ふーん。で、どうなった?」 「あ、えっと……僕、もう何を言われても、全部気にしないことにしたんだ」 「うんうん」 「そしたらさ、クラスでも何人か僕のことを理解してくれる人がいてさ、味方してくれたんだ」 「…………」 「気づかなかった……人から目を背けてたからさ。僕は一人だって思い込んでたんだな」 「……そっか。なら良かった」 「なあ、アンタは……」 「ん?」 「なんで、死んだんだよ」 人にものを尋ねるのに、こんなに緊張したことないな。 僕の問い掛けに、口裂けない女は驚いたように目を見開いた後、またいつもの無の表情に戻った。 「……さあね」 ――ほんとムカつくよね―― ――優等生ぶっちゃってさ―― ――マジ死んでくれないかな―― 「内緒」 「……じゃあさ、どうして僕を助けてくれたの?」 「探してた」 「え……?」 「自分に存在価値なんてあったのか……ずっと、ずっと探してた」 「見つけた?」 「……秘密」 そう言って、口裂けない女……いや、赤く染まった命の恩人は、にっこり笑った。 初めて見せた、心からの笑顔。そう信じたい。 きっとアンタは全部、分かってたんだろ? 僕が、自分と同じことをしようとしていると。 だから、驚かして追い返そうとした。 後悔して欲しくないって言ったよな? つまり、アンタは後悔しているのか……?
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