踏切少女は深紅に染まる

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「見返してやるんでしょ? 後悔させてやるんでしょ?」 「……あ、ああ……えっと……」 「ほら」 「…………」 「早く」 何だよ、それ。 平穏を取り戻しつつあった胸が、心が、じわりじわりと震えだす。 まただ。また、あの時の、冷え切った瞳。 止めろ。止めてくれ。 僕は……僕はそんな、まだ……。 「……なんてね」 「え?」 「君は、本当は死ぬ気なんてあまり無いんじゃないかな?」 「なっ……! そんなんじゃ……」 「死ぬのは簡単だけどさ、生きるのって大変だよね」 だから、君は生きろ。そう、口裂けない女は言った。 「……どういう意味?」 「君は、君の正義を貫き通せばいい。守り抜けばいい」 「でも……」 「自殺する正義のヒーローなんて、聞いたことある?」 「…………」 「……君に、後悔して欲しくないんだよ。私は」 「アンタ、一体……」 「ほら」 不意に背中をドン、と強めに押され、間抜け面のままつんのめる。 「うわあっ!」 「じゃあね」 そのはずみで転びそうになり、なんとか転ぶまいと必死に足を動かすうちに踏切を渡り終えていたようだった。 そして振り返るとまた、口裂けない女の姿は消えていた。
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