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いつもそうだ―。
と、私は過去を振り返る。
あの男は何故かいつも私の仕事先に現れては、私のターゲットを横取りする。
しかも決まって、楽しむ対象だけだ。
ただ適当に殺しているだけでは現れない。否、見ているだけで姿を現さない。
あくまで遊んで殺そうとする対象だけを邪魔する。
それ以外は微かな気配で私を監視しているだけで、決して手出しはしない。
見られている。それだけでも不愉快なのに、迷惑極まりない。
ただ、そういったストーカーは相手にするだけ図に乗ると思うので腹立たしさを抑えて無視し続けている。
いつ頃から付け回されているのかは覚えていないが、思えば今の仕事を開業したときからかもしれない。
―と、そこまで思考を巡らせたところで元の瓦礫の散らばる場所へと戻ってきた。
空を見上げるが、相変わらず雨が降りそうで降らない微妙な天気だ。
瓦礫の合間から流れる水が、暗いせいか黒く淀んで見える。
瓦礫の合間から覗く手が、こちらに手を差し伸べている。
その手に触れ、掴み、引いてみた。
が、それは二の腕までで、本来あるべき本体と呼べる体を持っていなかった。
「………」
無言でその手を瓦礫の上に放り投げ、私は一頻り瓦礫の下を覗き込んだりしながら、水溜まりで靴を汚しつつ人間だったモノたちを観察すると、その場を後にした。
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