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佐伯洵。洵という文字はシュンではなくマコトと読む。
洵は昔から頭がよく、彼が通っている高校でもトップクラスの成績をおさめている。
根は真面目で多少説教が長いという一面はあるものの、堀りの深い顔立ちは異性の注目の的にさせる事も容易いくらいのルックスの持ち主だった。
そんな彼の一日。
「行ってきます」
「お弁当持った?」
学校へ向かおうとする洵に潮はそう訪ねた。
「大丈夫だよ」
「ハンカチやティッシュは?」
「大丈夫だから」
「あ、家の鍵!」
「お前は俺のお母さんか」
洵は潮の額を軽く小突いた。潮は眉を下げながらへへへと笑う。
そのやり取りを一部始終見ていた他の兄弟達がリビングから笑っていたのを洵は見逃さなかった。
リビングにいる兄弟達に一睨みをきかせ、洵は玄関をくぐる。
「全く……」
洵は唇を尖らせながら時間を確認する。
まだ余裕でバスの時間に間に合う。それならもう少しゆっくりと歩くか。洵はそう思い、歩くペースを少し落とした。
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