11人が本棚に入れています
本棚に追加
「……」
潤は返事をしない。返事の代わりに聞こえたのは寝息だった。
「潤にいなんか知らないからな! お弁当、潤にいのだけ無しにするから」
「それは困る」
お弁当という単語を聞き逃さなかったのか、潤はガバリと勢いよく体を起こす。
寝癖などつかなさそうな短く刈った自らの髪をわしゃわしゃとかきあげるようにしながら潤はようやく布団から脱出する事にした。
「潮、弁当は?」
「大丈夫だって、嘘だから」
ようやく家族全員が起きたので、潮と潤は他の家族が待つ食卓へと向かった。
「おはよう、寝ぼすけお兄ちゃん。潮お兄ちゃんと本当に双子なの?」
クスクス笑いながらいうのは末っ子で長女の滴だ。
潮と潤は顔付きや体格も似ていないが、双子という関係にある。いわゆる二卵性双子である。
「お前だって潮がいないとなかなか起きないだろ?」
ムッとした表情を浮かべながら、潤は言い返す。それに関しては潤に一番言われたくないと潮は内心思った。
潮はようやく朝食にありつけると思いながら席につく。だが、当然ながら自分が家族を起こす前に作った朝食は見事に冷めていた。
最初のコメントを投稿しよう!