弾ける泡

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「葵!ドンペリ頂戴!コールなしね!早くして!」 通された席に座った途端、私はそう言い放つと、渡されたおしぼりを乱暴に返し、自分で煙草に火を付けた。 「おいおい、また喧嘩したのかよー」 葵はいつもそうだ。呆れたような声でそう言う癖に、まるで競馬やパチンコなんかの賭け事に勝った時のような誇らしい顔をする。 私は見ていないフリをして煙草を灰にしていく。目の前に置かれた銀色の灰皿はあまりに不格好で、だけどこの店にはお似合いだな、と納得する。自分の容姿と性格の悪さを棚に上げて。
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