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美津の空腹と、限りない好奇心が炎を掲げ、足は屋台に向かっていた。
桜並木の美しい公園の側に、その屋台はあった。
恐る恐る屋台にかかってているビニールの幕を捲り、中を覗いて見る。
「あの……いいですか?」
「空いてる」
「え?」
テントの中にはまだ誰もおらず、美津が口開けだった。
「あ、【かんとだき】っておでんなんですね」
大きなおでん鍋に具材がぎゅうぎゅうに詰められ、美味しそうな湯気をあげていた。
「かんじゃい(関西)では、おでんを【かんとだき】言う」
商売毛もなく、ニコリともしない初老の女性が菜箸を握って立っていた。
白髪混じりの短い髪にくるくるのパーマをかけ、細い目にキリッとした口元。
なまりから、韓国の人なんだなと推測できた。
美津は木の長椅子に腰をおろし、種をみつくろった。
「あの、日本酒ありますか?」
「あぢゅい(熱い)のか?」
「あぁ~ はい」
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