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俺、山田はとある高校の生徒会長である。取柄はない。
テニス部に所属しているが、特に活躍することなく二年の夏は終わった。
顔に特徴はないが、老人には人気があることが先日のデイサービス見学で発覚している。
今も、部活に行く途中で呼び止められ、明日のHRで配るプリントの印刷を押し付けられている途中だ。
一応放送で生徒会役員全員に召集を掛けてはいるが、誰一人現れる様子はない。
所詮生徒会長はその程度の扱いである。
最近の業務は、もっぱら印刷と荷物運びと言っていい。
特に夏休み明けの文化祭も終わった初冬、生徒会の仕事は目に見えて雑務へと変わっていた。
全てのコピーを終え、書類を女教師の机に積んだのち、俺は印刷室の鍵を事務の先生に渡し職員室を後にした。
夏を開けてようやくその力を失いつつある太陽が、最後の力を振り絞って、放課後の廊下を照らしていた。
窓の外では、文化祭に使用した木製アーチを、運動部が倉庫に戻している最中だ。
そんな時、
ふと、自分が生徒会長に就任した日を思い出す。
友人の勧めでなんとなく立候補し、パッとしない立候補者の中で僅差で当選したあの日。
大した決意もないまま就任しただけに、引き継ぎで号泣した前生徒会長の姿が、心に大きなプレッシャーとして圧し掛かった。
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